「マキタ 40Vmax・HiKOKI 36V・ボッシュ 18V、結局どのインパクトが正解なのか」。メーカーをまたいだ比較は、電圧の呼び方もセット構成も揃っていないため、カタログを 3 社ぶん開いても差がつかみにくいのが実情です。
先に結論を書くと、最大締付けトルクの序列は TD002G (220N・m) > GDX18V-210C (210N・m) > WH36DC / WH36DD (200N・m) ですが、この 20N・m 差で選ぶのは得策ではありません。4 機種は「どれもプロ用ハイエンド」で実用域の能力は拮抗しており、本当の分かれ目は バッテリープラットフォームをどの陣営で組むか と、各機だけが持つ固有機能 (マキタの DST、HiKOKI の細ビスモード、ボッシュの 2-in-1 ホルダー) にあります。
トルク 20N・m の差より、5 年後にバッテリを何台の工具で使い回せているかの方が、支払総額への影響は大きいです。
4 機種の公式スペックを横断比較
3 社の公式サイト掲載値を 1 つの表に揃えます。ボッシュの質量のみ「バッテリー無し」の公式表記である点に注意してください (他 3 機はバッテリ装着時)。
打撃数はマキタ TD002G の 4,600min⁻¹ が頭一つ抜けており、マキタ自身が「マキタ史上最速締付け」と謳う根拠になっています。一方 HiKOKI は WH36DD で「業界最速の締付スピード約 5.46 秒 (金物ビス φ7.0×120mm・2024 年 1 月当社調べ)」を掲げており、カタログ上の最速争いは事実上この 2 社の相打ち です。ボッシュは打撃数 4,100min⁻¹ と数字では並びですが、後述するとおり勝負所を「多用途性」に置いています。
トルク序列は 220 > 210 > 200 だが、4 機とも実用域では同格。差がつくのはプラットフォームと固有機能。
プラットフォームの違いが一番大きい
マキタ 40Vmax XGT — 専用バッテリの高出力路線
TD002G が載る 40Vmax XGT は、18V LXT とは互換性のない専用プラットフォームです。公式の推奨バッテリは BL4020 / BL4025 / BL4040 など 40Vmax 専用品で、充電器 DC40RA なら BL4025 を実用充電約 19 分で戻せます。既に 18V LXT 資産がある人は「もう 1 系統バッテリを増やす」ことになるため、40Vmax の丸ノコ・ハンマドリルなど高負荷機まで揃える計画があるかどうか が導入判断の軸になります。18V 資産を持つ人の乗り換えコストの実算は 40Vmax と 18V の乗り換え判断の記事 で別途整理しています。
HiKOKI マルチボルト 36V — 1 個の電池で 36V と 18V を両用
WH36DC / WH36DD のマルチボルトは「蓄電池 1 個で 36V 機にも 18V 機にも給電できる」のが最大の特徴で、36V-2.5Ah の蓄電池がそのまま 18V-5.0Ah として動作します。3 社の中で唯一、高電圧機と 18V 資産の分断が起きない設計 です。仕組みの詳細とおすすめの揃え方は マルチボルト 36V の選び方記事 にまとめています。
なお HiKOKI はこのマルチボルトの電池を、タブレスセルの次世代バッテリー T-PWR へ世代交代させつつあります。36V-4.0Ah の BSL3640MVT / BSL3640MVBT は 2024 年に発売済みで、2026 年 2 月にはシリーズ化と大容量モデル BSL3650MVT (36V-5.0Ah・2026 年夏発売予定) が発表されました (現在の公式製品ページでは希望小売価格 税別 36,000 円)。「今 WH36DC / WH36DD を買うと電池世代で置いていかれるのでは」という心配は不要で、両機とも公式の「ご使用いただけない製品」リストに載っておらず、T-PWR をそのまま装着できます。旧 4 モデル (BSL36A18X 系) も公式発表でデザインを刷新して継続と明言されており、廃番で行き止まりになる立ち位置ではありません。ただし Bluetooth 非搭載の T-PWR (BSL3650MVT / BSL3640MVT) では後述する WH36DD の細ビスモードが使えない点だけ注意してください。T-PWR と旧マルチボルトの実差・互換性の全体像は T-PWR と旧マルチボルトの比較記事 で整理しています。
ボッシュ 18V — AMPShare でブランドの枠も超える
GDX18V-210C はボッシュの Professional 18V System に属し、公式ページにあるとおりボッシュのプロ用 18V バッテリー・充電器がすべて共用できるうえ、マルチブランドバッテリーアライアンス AMPShare に対応します。電圧こそ 18V ですが、対応工具の裾野の広さで勝負するプラットフォームです。
各機の固有機能で選ぶ — 買い分けの本題
マキタ TD002G — DST と最速打撃 4,600min⁻¹
TD002G の核は DST (デュアルスプリングテクノロジー) です。硬さの違う 2 つのスプリングで打撃力を自動調整し、カムアウト低減と締付けスピード約 10% 向上 (マキタ従来機比) を両立。楽らく 6 モードと 4 段打撃切替は、別売の通信アダプタ ADP11 とアプリでカスタマイズでき、設定は 10 件まで登録可能です。防じん・防水は 4 機種で唯一 IP56 の等級表記があり、雨天・粉じん現場への耐性を明示しています。「最速で締めたい・過酷環境で使う・マキタで高負荷機まで揃える」人の選択肢です。実機の詳細は TD002G レビュー で深掘りしています。
HiKOKI WH36DD / WH36DC — 細ビスモードとトリプルハンマ
現行 WH36DD の売りは 2 つ。特許のトリプルハンマ機構 (打撃箇所を 2 → 3 箇所に増やし振動を低減) と、Bluetooth 蓄電池 + アプリで有効化する 細ビスモード (打撃を電子制御して職人のねじ締め始め動作を再現、回転数 0〜420min⁻¹) です。LED も 9 灯で、繊細なビス打ちと視認性に強く振った設計です。
前世代の WH36DC はトルク・打撃数が WH36DD と同値のまま中古相場が一段安く、「細ビスモードと 9 灯 LED を諦められるなら依然現役」という位置づけです。DC と DD の世代差の詳細は WH36DC レビュー と WH36DD レビュー を確認してください。
ボッシュ GDX18V-210C — 六角と角ドライブの 2-in-1
GDX18V-210C は 4 機種で唯一の「インパクトドライバー兼インパクトレンチ」です。ツールホルダーが 6.35mm 六角ビットと 12.7mm (1/2 インチ) 角ドライブソケットの 2-in-1 になっており、ビス打ちとボルト・ナット締め (M6〜M16) を 1 台で持ち替えなしにこなせます。最大緩めトルクは 370N・m と、締付けトルク (210N・m) を大きく上回る公式値で、固着ボルトの分解作業にも振れる設計です。トルクは 130 / 160 / 210N・m の 3 段階で調整でき、セルフタッピングネジ用・木ネジ用の 2 つの作業モードで材料の破損やネジ頭の空転を抑えます。
「ビスもボルトも 1 台で」「車・バイク整備と DIY を兼用」という使い方なら、この 2-in-1 は他 3 機に代えが効きません。
買い分けフロー — 手持ちバッテリ資産から逆算する
- すでにいずれかのブランドのバッテリを持っている → 同じプラットフォームの機種が原則。バッテリ・充電器を二重に買う差額 (2〜4 万円規模) をスペック差が上回ることはまずありません
- ゼロから揃える・高負荷機 (丸ノコ / ハンマドリル) まで見据える → マキタ 40Vmax (TD002G) か HiKOKI マルチボルト (WH36DD)。18V 機も併用したいならマルチボルトの両用設計が効く
- ボルト・ナット作業が日常的にある → GDX18V-210C。インパクトレンチを別に買う予算を 1 台に集約できる
- 予算を抑えつつ 36V 級の性能が欲しい → 中古の WH36DC。細ビスモード非対応を許容できるかだけ確認
同クラスの他機種も含めた横並びは インパクトドライバーカテゴリ で確認できます。
まとめ
- 最速・最大トルクの数字とタフさで選ぶ → TD002G (220N・m / 打撃 4,600min⁻¹ / IP56)
- 繊細なビス打ちと 18V 両用プラットフォーム → WH36DD (細ビスモード / トリプルハンマ / マルチボルト)
- 同性能を安く → WH36DC (トルク・打撃数は DD と同値)
- ビスとボルトを 1 台で → GDX18V-210C (2-in-1 ホルダー / 緩め 370N・m)
カタログの 20N・m 差は現場の体感ではほぼ埋まります。5 年使うバッテリ資産の設計図を先に描き、そのうえで固有機能に差額を払う価値があるかで決めてください。
よくある質問
4 機種で一番パワーがあるのはどれですか?
公式値の最大締付けトルクではマキタ TD002G の 220N・m が最大で、ボッシュ GDX18V-210C が 210N・m、HiKOKI WH36DC / WH36DD が 200N・m と続きます。打撃数も TD002G の 0〜4,600min⁻¹ が最速です。ただし 4 機種ともコーススレッドや普通ボルト M16 級までカバーするプロ用ハイエンドで、一般的な木工・内装作業でこの差が仕上がりを分けることはほぼありません。
GDX18V-210C はインパクトレンチとして使えますか?
使えます。公式仕様で 12.7mm (1/2 インチ) 角ドライブを備えた 2-in-1 ツールホルダーを搭載し、M6〜M16 のボルト・ナットの締め・緩めに対応します。最大緩めトルクは 370N・m という公式値で、締め (210N・m) より緩め側に強い設計です。ただし質量の公式値 1.2kg はバッテリー無しの数値なので、装着時の重さは他機種との比較時に注意してください。
WH36DC と WH36DD はどちらを買うべきですか?
トルク (200N・m)・打撃数 (4,100min⁻¹)・質量 (1.6kg) は同値です。WH36DD はヘッド長 111mm への短縮、9 灯 LED、トリプルハンマ機構、アプリ有効化の細ビスモードが加わった現行機。新品で長く使うなら WH36DD、コスト優先で中古も視野なら WH36DC が合理的です。世代差の詳細は WH36DC レビュー で解説しています。
今 WH36DC / WH36DD を買うと、HiKOKI の新バッテリー T-PWR は使えますか?
使えます (2026 年 7 月時点)。次世代バッテリー T-PWR の 36V-5.0Ah モデル BSL3650MVT は 2026 年夏発売予定 (希望小売価格 税別 36,000 円) ですが、WH36DC / WH36DD とも公式の「ご使用いただけない製品」リストに載っておらず、そのまま装着できます。旧マルチボルト 4 モデルも公式発表で継続と明言されているため、どちらを買っても電池世代で困ることはありません。ただし WH36DD の細ビスモードは Bluetooth 蓄電池が必須なので、使うなら Bluetooth 付きの BSL3650MVBT (2026 年夏発売予定・税別 39,100 円) か発売済みの BSL3640MVBT (税別 35,900 円) を選んでください。詳細は T-PWR と旧マルチボルトの比較記事 にまとめています。