電動工具をこれから揃えるとき、最初にぶつかる壁が「どのメーカーで揃えるか」です。バッテリー規格を一度固定するとブランド乗り換えのコストが大きく、シェア上位かどうかで中古買取や互換アクセサリの選択肢も変わります。本記事では 2026 年時点の国内シェアデータ をベースに、マキタ・HiKOKI・ボッシュという国内 3 強の立ち位置と、シェア数値を DIY ユーザーが「自分の選び方」に翻訳するための視点を整理します。
シェア表はそのまま鵜呑みにせず、自分の用途に翻訳して読むのがコツです。
電動工具メーカー国内シェア 2026 — 数字で見る勢力図
国内の電動工具メーカー市場は 2026 年時点で約 3,300 億円規模 とされ、2030 年には 3,514 億円 に拡大する予測 (経済予測 AI プラットフォーム xenoBrain による予測値・2026 年 1 月時点)。年率 6.47% の緩やかな成長で、国内市場としては安定セグメントに分類されます。
トップ 8 社のシェア (xenoBrain 2026 年予測値)
| 順位 | 企業名 | 国内シェア |
|---|---|---|
| 1 | 株式会社マキタ | 23.9% |
| 2 | 工機ホールディングス株式会社 (HiKOKI) | 18.6% |
| 3 | ボッシュ株式会社 | 16.7% |
| 4 | 京セラ株式会社 (旧リョービ電動工具) | 7.8% |
| 5 | パナソニック株式会社 | 4.5% |
| 6 | 株式会社ディスコ | 3.2% |
| 7 | 京セラインダストリアルツールズ株式会社 | 2.9% |
| 8 | マックス株式会社 | 1.7% |
上位 3 社で 約 59% を占めており、国内の電動工具市場は「マキタ・HiKOKI・ボッシュ」の 3 強構造とまとめて差し支えありません。4 位以下は B2B (建設・電工・産業) 寄りの製品ポートフォリオが大半で、DIY 売り場の主役にはなりにくい位置取りです。
この数値は「B2B 込み」と心得る
注意したいのは、これらのシェアは 業務用・産業用・自動車整備など B2B 用途も合算した数値 という点。ホームセンターや DIY 専門量販店で目にする面積比 (=DIY 体感シェア) はマキタと HiKOKI がさらに突出して見えます。
逆にディスコや京セラインダストリアルツールズのようなブランドは、半導体製造装置や工場ライン向けに強く、一般売り場ではほぼ見かけません。個人 DIY ユーザーが選ぶ実質的な候補は、上位 3 〜 4 社に絞られる と考えてよいでしょう。
B2C 流通の厚さがブランド体感を決める
YouTube の DIY 系コメントで「SK11 (藤原産業のプライベートブランド) は店頭に数点しか置いていない、現物を触ってから買いたい」という声があるように、 店頭流通の厚さはそのままブランドの利便性 につながります。マキタと HiKOKI はホームセンター・専門店どちらでも実機展示が厚く、ここがシェア数値以上の体感差を生んでいます。
シェア表を見るときは「国内合算」「B2B 込み」を意識すれば、店頭の体感とのギャップに振り回されません。

マキタ — 国内シェア 1 位 23.9% を支える総合力
マキタ (株式会社マキタ・愛知県安城市) は 1915 年創業の老舗で、現在も国内シェアの 4 分の 1 弱を独占する マキタ ブランドの本体です。創業 110 年・電動工具に特化した専業メーカーという立ち位置が、ラインナップの広さに直結しています。
14.4V / 18V / 40V Max という 3 軸プラットフォーム
マキタを選ぶ最大の利点は 18V LXT シリーズの圧倒的な互換性 です。インパクトドライバ・丸ノコ・ジグソー・サンダー・ブロワー・チェーンソーまで、同じ 18V バッテリー (BL1860B など) で 200 機種以上を回せます。
近年は 40V Max という新規格も併走させており、より高出力が必要な丸ノコや刈払機はこちらに移行中。ただし 18V との互換性はなく 「18V 派」「40V Max 派」のどちらに乗るかは慎重に判断する必要 があります。日常的な DIY であれば 18V LXT が現時点でも十分主流です。
TD173DRGX に代表される「過不足ない実用バランス」
マキタ 18V の現行ハイエンド機にあたるインパクトドライバが TD173DRGX です。
トルク 180N·m・全長 111mm・質量 1.5kg というスペックは「DIY 用としては余裕、プロ用としても合格点」というレンジで、迷ったらこれという定番ポジションです。詳しい使い心地は マキタ TD173DRGX レビュー でも触れています。
流通網と中古市場の厚さ
シェア 1 位のメリットは新品価格の競争力だけではありません。中古買取・メルカリ等のフリマでも値崩れしにくい のがマキタの大きな強みです。
買取専門店 (バイセル・工具男子・ツールオフ等) はマキタの査定相場を厚く持っており、状態が良ければ定価の 4 〜 6 割で売却できるケースも珍しくありません。HiKOKI・ボッシュも買取は可能ですが、流通量の差から マキタの方が出口戦略を立てやすい のは事実です。
「将来売るときに困らないブランドはどれ?」と聞かれたら、まずマキタが正解になります。
HiKOKI (工機 HD) — シェア 2 位 18.6% のマルチボルト戦略
HiKOKI は旧日立工機が 2018 年に独立 (米投資ファンド KKR が買収) してリブランドした電動工具メーカー。工機ホールディングス株式会社が運営しており、シェアは 18.6% でマキタを追う 2 位の位置です。
36V マルチボルトという独自の戦い方
HiKOKI 最大の差別化要素が マルチボルトバッテリー です。同じバッテリー 1 個で 18V 工具と 36V 工具の両方を駆動できる規格で、マキタの 18V と 40V Max が完全別系統なのに対し、HiKOKI は 「電圧の壁を 1 個のバッテリーで超える」 という設計思想を採っています。
「18V の機動性も欲しいけれど、丸ノコ・ハンマドリルでは 36V のパワーも使いたい」というユーザーには、バッテリー資産を二重に持たなくて済む点が決定打になります。詳細は HiKOKI マルチボルト 36V おすすめ で整理しています。
WH36DD で見るパワーと軽量化の両立
HiKOKI の現行 36V インパクトドライバ WH36DD は、36V クラスのトルクを実現しながら 質量 1.6kg に抑えた一台です。
マキタ TD173DRGX (18V・180N·m・1.5kg) と比較すると、WH36DD は +20N·m のトルクを +0.1kg の重量増だけで実現 しており、HiKOKI のマルチボルト戦略の合理性がスペックに表れています。WH36DD の詳細 は個別ページにまとめています。
KKR ファンド体制のスピード感
工機 HD は KKR ファンド傘下に入って以降、 製品リリースサイクルと M&A 戦略 が活発化しています。北米メタボ HPT (旧 Hitachi Power Tools) との統合や、アクセサリブランドの拡充など、グローバルでの動きはマキタより機動的とも言われます。
DIY ユーザーから見ると「次の世代のマルチボルトはどう進化するか」を予想しやすく、将来性を見込んでプラットフォームを選ぶ材料になります。
18V も 36V も使いたいなら HiKOKI、まず 18V で全部揃えるならマキタ、という分け方が一番素直です。
ボッシュ — シェア 3 位 16.7%、欧州プロブランドの日本市場
ドイツ発の ボッシュ (Robert Bosch GmbH) は世界規模では国内 2 強より大きい超大手ですが、日本国内シェアは 16.7%。海外勢では唯一トップ 3 に食い込む位置取りです。
ブルー (プロ) とグリーン (DIY) のラインの違い
ボッシュは プロ用「ブルー」と DIY 用「グリーン」 の 2 系統を明確に分けています。
- ブルー (青ボディ): プロ向け。バッテリー・本体ともマキタや HiKOKI と同じ価格帯。耐久・精度で勝負
- グリーン (緑ボディ): DIY 向け。低価格・軽量・取り回し重視。ホームセンターで見るボッシュはほぼこちら
DIY 経験を積んで本格機が欲しくなったら、グリーンからブルーに乗り換えるユーザーが多いのが実情です。ただし バッテリーは青・緑で互換性がない ため、最初から本格 DIY を見越すなら最初からブルー一択。詳細は ボッシュ のブランドページを参照してください。
GDR18V-210C — ボッシュ青の 18V インパクト
ボッシュのプロ用 18V インパクトドライバ GDR18V-210C は、最大トルク 210N·m でクラス最高クラスのパワーを持ちます。同じ 18V でマキタ TD173DRGX が 180N·m なので、ボッシュ青のパワー設計の特徴がよく分かります。
詳しいスペックは GDR18V-210C 個別ページ にまとまっています。
国内で「ボッシュ青」を選ぶメリット・デメリット
メリット: - 欧州プロ規格の精度・耐久 (建築・木工で評価が高い) - ブラシレスモータ + 振動低減技術 (HiKOKI・マキタと並ぶ高水準) - 海外現場・海外作業で同じバッテリーが使える広がり
デメリット: - 国内アクセサリの流通量はマキタ・HiKOKI に劣る - 中古市場での出口は弱め (買取査定はマキタの 7 割程度になりがち) - 国内専用機 (高圧釘打ち・電工系) のラインナップは薄い
「精度第一・国内売却は考えていない」DIY 中級〜上級者にハマるブランドです。
ボッシュ青はマキタ・HiKOKI と同価格帯。安く済ませたい人向けではなく「精度・耐久にお金を払う人」の選択肢です。
4 位以下のメーカー — 京セラ・パナソニック・マックス・海外勢
トップ 3 を外すと、メーカー選びの難易度は一気に上がります。残りのプレイヤーの位置取りを把握しておくと、用途特化型の最適解が見えてきます。
京セラ (旧リョービ電動工具) — シェア 7.8%
2018 年に京セラがリョービの電動工具事業を買収して以降、ブランド表記が「リョービ」から 「京セラ (KYOCERA Industrial Tools)」 に切り替わっています。中古市場では「リョービ」表記の旧モデルがまだ多く残っており、買取・メルカリで混乱しやすいポイントです。
DIY 普及機 (1 万円台のインパクトドライバ・ドリルドライバ等) では依然として強く、 「とりあえず一台、安く始めたい」初心者の入り口 として有力です。ただし上位機種は弱く、将来本格 DIY に進むと買い替えになりがちな点には注意してください。
パナソニック — シェア 4.5%
家電のイメージが強いパナソニックですが、 電気工事士向けデュアル機 (14.4V/18V 両対応) で確固たる地位を持ちます。一般 DIY 用途というよりは、職人 (特に電工) が好んで使うブランドです。
マックス・海外勢 (DeWalt・Milwaukee)
マックス (1.7%) はエア工具・釘打機で強く、コードレス電動工具の存在感はまだ控えめ。海外勢の DeWalt (米)・Milwaukee (米) は世界では超大手ですが、国内シェアではトップ 8 に入りません。並行輸入やプロショップ経由での入手が中心で、国内サポート網はまだ薄いのが現状です。
「変わり種ブランドを使いたい」気持ちは分かりますが、初手はトップ 3 から選ぶのが事故が少ないです。
シェアから読み解く DIY ユーザーのブランド選び
ここまでのシェアデータを「自分は何を買うべきか」に翻訳してみます。
シェア上位 3 社で選べば外さない理由
工具は 本体だけで買うものではなく、後からアクセサリ・追加バッテリー・追加機種を足していくもの です。シェア上位 3 社で揃える最大の利点は次の 3 点。
- 横展開: 同じバッテリーで使える機種が圧倒的に多い (マキタ 18V LXT で 200 機種以上)
- アクセサリ: ビット・替刃・集塵アタッチメントが国内で潤沢に揃う
- 出口: 使わなくなったときの中古買取・フリマ流動性が高い
逆に 中古でメルカリ購入を検討する場合の注意点 でも触れていますが、シェア下位のブランドは中古市場の流通量が少なく、相場が読みにくいデメリットがあります。
用途別の選び方フロー
実用面の判断軸を整理すると次の通りです。
- 本格 DIY・職人志向 → マキタか HiKOKI 18V LXT の横展開重視ならマキタ、18V/36V を 1 個のバッテリーで行き来したいなら HiKOKI
- 精度・欧州デザイン重視 → ボッシュ青 (ブルー) 特に木工精度・トリマ・ルータ系はボッシュ評価が高い
- 軽 DIY・初心者の最初の 1 台 → 京セラ (旧リョービ) 1 万円台の入門機が豊富。本格化したら買い替え前提
- 電気工事・電工系 → パナソニック デュアル機 (14.4V/18V) の利便性は他社にない強み
バッテリー規格を最初に固定するのが鉄則
ブランド選びで一番後悔しがちなのが 「途中で別ブランドに浮気して、バッテリーを 2 系統持つ羽目になった」 パターンです。バッテリー本体は 1 個 1 〜 2 万円、これが 4 個 5 個になるとそれだけで 10 万円コース。
最初の 1 台目を買う段階で「自分は今後 5 年間、このブランドで揃え続けるか」を真剣に考えるのが、長い目で見て一番のコストカットです。
ブランド選びは「機種選び」より「バッテリー規格選び」と考えるのが正解。1 系統に揃え切る覚悟がコスパを決めます。
まとめ
2026 年時点の国内電動工具メーカーシェアは マキタ 23.9%・工機 HD (HiKOKI) 18.6%・ボッシュ 16.7% の 3 強構造。これらの数値は B2B も含む業界全体の合算ですが、DIY 売り場での体感も概ね同じ序列です。
ブランド選びで迷ったら、まずマキタと HiKOKI という 2 強の違いを上記の用途別の整理で押さえ、それでもピンと来なければボッシュ青を検討する、という順番が最も外しにくい流れです。
よくある質問
Q1. マキタと HiKOKI のシェア差は今後縮まりますか?
xenoBrain 予測では今後 5 年で国内電動工具市場は年率 6.47% で緩やかに伸びると見られており、シェア構造そのものは大きく変動しないと考えられます。ただし HiKOKI はマルチボルト戦略と KKR ファンド体制で攻めの姿勢が強く、製品リリースのスピードはマキタを上回る場面もあります。
Q2. ボッシュ青と緑、DIY ならどっちですか?
「DIY だから緑」と単純に決めるのは早計です。緑は確かに低価格ですが、本格的に DIY を続けるとパワー・耐久不足で買い替えになるパターンが多いです。月 1 回以上電動工具を使う頻度の方は、最初からボッシュ青またはマキタ・HiKOKI に行く方がトータルでは安く済みます。
Q3. メルカリ・買取で値崩れしにくいのはどのブランドですか?
国内中古市場の流動性ではマキタが最も厚く、次いで HiKOKI。ボッシュ青も需要はありますが、買取査定はマキタの 7 割程度になるケースが多いです。京セラ (旧リョービ)・海外勢は買取相場が読みにくく、価格交渉が長引く傾向があります。
Q4. なぜリョービ電動工具は「京セラ」表記になったのですか?
2018 年に京セラがリョービ株式会社の電動工具事業を買収し、現在は「京セラインダストリアルツールズ株式会社」(シェア統計では別法人) と京セラ本体ブランドに分かれて販売されています。中古市場では「リョービ」表記の旧モデルも継続して流通していますが、メーカー保証・修理窓口は京セラに承継されています。